エルラジン(免疫抗原物質)
マツ科植物の「倒木更新」のなかで、自然界での植物免疫の存在を知り得る。
この「倒木更新」とは、マツ自らが子孫を極限にまで制限し、他の共生する植物に
まず生育に良好な環境を与え、さらに自らの免疫抗原を地中に浸透させてすべて
の植物に与え、免疫を更新していくと言う現象です。
日本全土のマツ枯れ現象は、このマツの植物意識の現れなのです。
マツのみが持っている免疫抗原(エルラジン)を自然界に提供してくれている。
多くの作物を、連作障害から救おうとするマツの恩恵なのです。
マツが風害などの外的要因によって枝や根に損傷を生じた時、そこから褐色腐朽菌
が進入する。この菌は、樹幹の中心部の樹脂の多い部分の侵食をはじめる。
そのため樹木は容易に風害を受ける。風倒木となれば、この菌は次ぎに食い残した
セルロース部分の侵食をはじめる。セルロースの侵食で、リグニンの構成比率が
高くなり、リグニンの色調である褐色が強く表れ始めることから褐色腐朽と名付け
られてきたゆえんである。褐色腐朽は、崩形態(メタ1)・定形態(メタ2)・放散態
(メタ3)という変態をたどりながら進行する。メタ1では、黄褐色から褐色に変化
していく。常に湿潤を保ち湿ったオガクズの様な状態、メタ2では、しだいに凝固
を始め濃褐色の湿度を保った状態、メタ3は凝固の最終段階で、成分の放散が
始まってくる。色はしだいに薄れて最後は淡い壌土色、比重はこの3態で最も軽くなる。この3態から抽出される
エルラジンと言う成分が、遺伝子をコントロールしている機能に働きかける。植物の生育初期に根から吸収され
ると植物本来の免疫が復活する。これが植物学において未解明であった倒木更新の真実の機能である。
これを連作障害作物に適用させるには、自然界で長期に作用するこの免疫機能を、短期に圧縮する技術が
必要になってくる。もしその技術が確立されれば、植物本来の免疫力を知る事が出来最大限に活用させられる。
しかも、この免疫法の素晴らしい所は、いったん得られた免疫機能がそのまんま子孫に伝達されて行く事です。
その結果、あらゆる作物の無農薬栽培を実現することが可能になるのかも!
自ら身を挺していったマツたちの遺物によって、忘れかけている植物の生命の尊さ、力、美しさを知り得るのでは!
   平成5年 「現代農業」’93土肥特集 10月号より 引用